【与謝の園】
1985年4月に開設した特別養護老人ホーム与謝の園を元小学校跡地に移転新築する計画です。
地域にとって思い入れがある場所であり、敷地内には小学校の思い出の品を保存した記念公園、
施設内には地域交流ホール等を設け、地元の方が立ち寄りやすい開かれた施設を目指します。
また、移転を機に従来型のケアからユニット型の個別ケアに移行することで、入居者様のプライバシー等に配慮し、
これまで以上に、一人ひとりに寄り添ったケアを提供します。
建物は敷地中央に配置し、近隣と離隔距離をとり住環境に配慮しながら、周囲には回遊性をもたせた車路・駐車場を
設けています。
車での移動が中心となる地域で、施設への訪問、送迎、搬入時などの快適性や実用性に配慮した計画となっています。
南東側には忠魂碑や旧小学校の卒業記念碑・植樹を保存する記念公園が整備され、地域の方の思い出を引き継ぎます。
設備機器置場には非常時に施設が稼働できるようガス発電機が設置されています。
給水ポンプや一部の空調機器を動かすことも可能です。
災害時などには地域交流ホールを開放し、近隣住民の方の避難先としても機能するように考えています。
敷地の西側には新設したこども園、東側には日吉神社、周囲には住宅が点在しています。
敷地のほぼ中央に建物を配置することで、近隣に対して離隔距離を確保しつつ、職員及び来客用の駐車場を効率よく
確保し、敷地内で必要台数分の駐車スペースを設ける計画としています。
1階の地域交流ホール、デイサービス部門デイルーム、また各階のユニットの共同生活室は南に面した計画とし、
採光と眺望が得られる開放的な空間になるように計画しました。
建物のメインエントランスについても、奥行きのある庇をもった車寄せを設け、かつ南側に配置することで積雪の
影響を受けづらい計画としています。
京都府下ではユニット型でかつ個室とすることが特養の計画条件でした。
当初1ユニット10人のユニットプランを計画していましたが、設計中に1ユニットの上限人数の緩和があり、
15人定員で計画をすることが可能になりました。
ベテラン職員の方が多く在籍する、いまの与謝の園の体制を活かし、15人ユニットに挑戦したいという思いから、
15人ユニット計画がスタートしました。
既存の与謝の園では、入居者は重度といっても身体的には残存能力の高い方も多く、食堂や突き当りの窓辺といった
ところを選んで居場所をつくりだしておられました。
新しい与謝の園でも入居者が思い思いの居場所で過ごせるようにしながら、介護職員にとっても介護しやすい・
働きやすい空間になることをコンセプトとしました。
共同生活室は3か所ありますが、その中でもメインとなる共同生活室1・2は分けつつも、見守りの点では一体的な
空間になるように計画しています。
共同生活室3はまた別のリビングとして活用され、入浴前後のくつろぎの場となります。
15人ユニットではありますが、ユニット内で様々な居場所を設け、少人数でその方のペースで過ごすことも目指しました。
これまでの10人ユニットよりも居室という死角が増え、ユニット全体の面積も増えますが、その点は見守りセンサーの
導入でカバーし、建築的な面だけでなく、設備的な面でも介護業務を効率化し、入居者に適切なケアが提供できる
計画としています。